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【読書感想文】約束の海(山崎豊子、新潮文庫)

【読書感想文】その1 約束の海(山崎豊子

 

大人だって読書感想文書いてもいいよね、ってことで早速の1冊目は山崎豊子の『約束の海』(新潮文庫、2016年)。2013年に亡くなったwikipedia:山崎豊子さんの遺作で、実際に1988年にあったなだしお事件wikipedia:なだしお事件海上自衛隊の潜水艦と遊漁船が追突した事件)を元に、海上自衛隊を舞台にした小説・・・なんだけど残念ながら1部のみで作者が亡くなってしまったで未完である。
実際に販売されている小説は、完結した1部+作者が残したメモが載せてあって、なんとなくの先の話がわかるようになってる。

 

あらすじは、冒頭で書いた通り実際にあったなだしお事件を元に、海上自衛隊の潜水艦「くにしお」に搭乗する花巻二尉が、事故発生から裁判終了までに悩む話。当時の自衛隊を取り巻く世論に振り回されたり、花巻二尉自身も、元帝国海軍少尉で第二次世界大戦中に真珠湾攻撃のときに米軍の捕虜第一号になった自分の父親との関係性に悩み、自分の進退についてもどうしようか悩む。また、ひょんなことで助けたフルート演奏者の女性についても気になって関係を深めようか悩むんだけど、事故で色々と足踏みしてしまう。

この作者の別の作品の『沈まぬ太陽』を読んでいて、それが結構好きだったのでかえすがえす今作が完結できなかったのが残念・・・途中で花巻のライバル扱いで出てくるキャラクターが二人いて、一人(丹羽)は高校の同級生で今は防衛庁職員、もう一人(北)は防衛大をドロップアウトして、未だに自分が何をしたいか悩んでいる。彼らもきっと2部以降どんどんキャラの肉付けがされていくだったんだろうけど、1部完結となってしまった今では『沈まぬ太陽』に出てくる行天の焼き直しっぽく最初は見えてしまったのが残念でならない。

それと、物語中盤辺りで事故の裁判の描写があるんだけど、そこがすごい面白かったのに気づいたら文庫の最後で裁判終わってた。びっくりした。面白かったからもう少し掘り下げてほしかったのに・・・確かに花巻二尉は別に裁判に証人喚問されたわけでもないからしょうがないんだけど、それなら最初の裁判もなぜ描写したのか。小沢さん(フルート奏者。花巻が気になってる女性)と丹羽(花巻の高校の同級生。嫌なヤツ)を引き合わせるための伏線だったのかな。

ストーリーのメインに当たる潜水艦についても、沢山描写がされているんだけどすごい丁寧かつ緻密な描写が面白かった。専門的なところは全くわからないんだけど、実際の操船?はこんなに大変で神経を使うものなんだなとも思ったし、通りで海自の中でもエリートしか乗れないんだろうなあと尊敬する。

 

 

約束の海 (新潮文庫)

約束の海 (新潮文庫)